創世神話については、世界にはたくさんありますが、日本では古事記や日本書紀に国々や神々を生んでいく神話があります。しかし、「記紀神話」自体、神武天皇が日本の支配を託された神の子孫だからと言う物語を説明しただけで人間創造については説明されてません。天地、人間創造について有名なのが「ギリシャ神話」と「創世記」であり、ギリシャ神話はカオス(混沌)から大地(ガイア)が生まれ、ガイアは夫でもある天(ウーラノス)を生み、この2神により天地が創造され、プロメーテウスが人間を創造したとも言われています。創世記はキリスト教では旧約聖書、ユダヤ教ではヘブライ語聖書に記載されてますが、どれも影響受けたであろうとされている話が、約5000年前のシュメル神話です。

 

 現在のイラク南部で約7000年前、最初の都市文明の萌芽「ウバイド文化期」を経て、1500年後に都市文明を完成させたのがシュメル人であり、メソポタミア文明の始まりです。メソポタミアは、「(両)河の間の土地」を意味するギリシア語で、メソポタミアは大きく二つの地方に分けられ、北部がギリシア語で「アッシュルの土地」を意味するアッシリア、南部が「バビロンの土地」を意味するバビロニアです。バビロニアはさらにニップル市を境に北部をアッカド、南部をシュメルといい、シュメルはペルシャ湾付近の低地帯であって、シュメルの古代都市はユーフラテス河流域に発達しています。古代メソポタミア文明はこのシュメルから始まり、その最古の都市文明の時期に学校で記された文学作品が「シュメル神話」です。

 そのシュメル神話で、いくつかの物語から、次のような「天地創造」の過程が推測される。最初に存在したのは「原初の海」ナンム女神である。ナンムを表す楔形文字は表語文字で「海」を意味し、女神は「海」そのものであった。この「原初の海」が天と地をひとつに結合している宇宙的山を産んだ。神々は人間と同じ姿をしていて、「天」アンは男神、「地」キ(大地)は女神であった。彼らの結婚が大気を司るエンリル神を産み、エンリルは次に天を地から分離した。天を運び去ったのは父アンであったが、エンリル自身が、母であるキ(大地)、すなわち地を運び去った。そしてエンリルが母なる大地と結合したことが、宇宙の生成、「人間創造」、そして文明の樹立のための舞台を用意することになったという(岡田朋子、小林登志子 共著『シュメル神話の世界』中公新書 p.35)とあります

 そして、人間が創造された理由が、

 「エンキ神とニンマフ女神」-酔っぱらった神々の創造合戦

 不平をいう神々

 古の日々に、古の日々に、天と地がつくられたときに、

 古の夜々に、古の夜々に、天と地がつくられたときに、

 古の年々に、古の年々に、運命が定められたときに、

 シュメルの神々が生まれ、女神たちが娶られ、女神たちは天と地に分けられた。身ごもった女神たちは次々に出産し、神々が増えたので。神々は食物を得るために働かねばならなかった。運河を開鑿し、浚渫するなどのつらい仕事に耐えていた神々は不平をいい出しはじめた。きつい仕事をさせられた低位の神々はことにそうだった。こうした事情を知らずに、神々が頼りにしている知恵の神で、創造神でもあるエンキ神は熟睡していた。そこで「原初の母」ナンム女神は神々の嘆きを息子エンキに伝えにいった。「息子よ、起きなさい。あなたの知恵を使って、神々がつらい仕事から解放されるように身代わりをつくりなさい」母の言葉で目覚めたエンキは母に次のようにいった。「母上よ、あなたが計画した創造物は存在するようになるでしょう。籠を運ぶ仕事をその者にさせましょう。母上がアブスの最上部の粘土をこねて、創造物をつくるでしょう。ニンマフ女神に母上の手助けをさせましょう。ほかに七柱の女神たちにも手伝わせましょう。母上が運命を宣言した後で、ニンマフはその者に籠を運ぶ仕事をさせるでしょう」(岡田朋子、小林登志子 共著『シュメル神話の世界』中公新書 pp.26-27)

 と神々の代わりに働かせるために人間を創造しています。

 

 シュメル神話の「最上部の粘土をこねて、創造物をつくるでしょう」がギリシャ神話でプロメーテウスが粘土から男を造ったことや創世記の「 主なる神は、土(アダマ)の塵で人(アダム)を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった」(2:7 新共同訳)と同じであり、そして、人間を働かせるためは、聖書の「主なる神は人を連れて来て、エデンの園に住まわせ、人がそこを耕し、守るようにされた」(2:15 新共同訳)と同じす。明らかにシュメル神話から影響を受けたと考えられます。さらに、北欧神話では、最高神オーディン3兄弟によって、流木から人間が創られています。

 北欧では森林、大河周辺の降水量の少ない地域では粘土、神話の素材に周りの自然環境が影響したのだと考えられます。

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